新10 1-
719:インドの散文調の詩(ノーベル文学賞貰ってるらしい) / :
何か良く分からんが、凄く感動した。
『ギーターンジャリ』
わたしは うらぶれた町の道で
一軒一軒ドアを叩いて 物乞いしていた
そこへ 黄金(こがね)の馬車が近づいてきた
まるで夢のようだ
――あの素晴らしい馬車には どんな高貴な王様が乗っているのだろう
期待は高まった 貧しい日々に終止符を打つことができるかもしれないと
わたしは立って待っていた
王は気前よく施しものをくださるだろう
この埃っぽい田舎道に富が撒かれるだろう
馬車はわたしの前で止まった
王はわたしをまっすぐ見 微笑みながら馬車から降りてきた
――ついにツキが回ってきたのだ!
王は不意に右手を差し出し わたしに言った
「そなたは余に何を恵んでくれるのか」
なんというお戯れだ 王が乞食に物乞いするとは!
わたしは面くらい 途方に暮れつつも
自分の袋から いちばん小さな穀物の粒を取り出して
王に渡した
何という驚きだったろう――
その日が暮れて わたしが袋のなかみをあけてみると
貧しいひとつかみの穀物のなかに 小さな黄金(おうごん)の粒が入っていた
わたしは 泣き崩れた
なぜ なぜわたしは 自分の持っているすべてを王に差し出さなかったのだろう

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