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87:氏名黙秘 / :
司法教育の名門、中央大の担当者は別の誤算≠ノ頭を痛める。
入学予定者約三百人のうち、七副を早稲田、東大、慶応など他大学の出身者が占め、「うちの学生が予想以上に少なかった」ことだ。
志願者は多かったので、自校の法学部生らがはじき出されたことになる。
「法科大学院に上がれる法学部生が少ないとなると、学部の人気に響きかねない」。職員の危機感は強い。
独協大は定員五十人のうち自校出身が四人だった。他校の人材受け入れは悪いことではない。
ただあまりの偏りに、教授の花本広志は「お金のかかる法科大学院の運営に、自校の学部生の授業料も回している。
他校出身者ばかりでは不満が出かねない」と気をもむ。 そして早くも来年度の入試を巡るし烈な争いが始まっている。
早稲田大は今月上旬、来年度の受験生向けに進学相談会を開催。「もう受験生を囲い込もうというのか」。
中堅私大の教授は焦りを募らせる。二〇〇五年度開校を目指す筑波大もパンフレットを作製、社会人向けに都心で夜間授業することを必死にアピールする。
各校の焦りの背景にあるのは「数年後に淘汰(とうた)が始まるのは目に見えている」(中央大学長の角田邦重)という認識だ。
二年後に始まる新司法試験で合格率が低い大学は優秀な学生が集まらなくなり、その結果さらに合格率が下がるという悪循環に陥る。
そこで懸念されるのは法科大学院の司法予備校化だ。関西で教える予定の弁護士は「実務演習と銘打ちながら試験勉強が実態の授業がある」と明かす。
予備校の人気講師をスカウトした大学もある。知識偏重の反省から生まれた法科大学院が予備校化すれば、本末転倒との批判は必至だ。
新司法試験に一人でも多く合格させつつ、理念通りの質の高い教育を続けられるか―。中央大学長の角田は「二兎(にと)を追わざるを得ない」とする。
法科大学院の成否は、大競争時代の現実と理想の間で揺れる、大学教育の行く末を占うはずだ。 (敬称略)


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